2007-7 何もなくて豊かな島 カオハガン島へ行こう!
この日はお祭りを兼ねて、島の子どもたちがミュージカルをするというので、マクタン島の港からボートで30分のところにある、カオハガン島へ向かった。日本人崎山さんがこの島のオーナー。
彼の著書「何もなくて豊かな島」は 私が小学生のころから実家の本棚にあった。真っ青の海にポツンと浮かぶ島の本カバーをいつも見ていた。まさかあの島に行くことになるなんて!はやる気持ちを抑えきれずに、ボートに乗り込む。このミュージカルは「島の子どもたちに人前かを表現する喜びを味わってほしい」と事務局長、原育美さん(NGO「南の島から」の事務局)が始められ、今年でもう6回目。今回は、振り付け師のあの南流石さんと女優白土直子の2人がボランティアで振演技指導に加わったというから期待大!!
島に到着後、カオハガン宿泊施設の母屋でお昼寝して、そのあと島を散歩。お祭りということもあって、20分ほどで一周できる島の中はほんとにたくさんの人でにぎわっていた。年に一度お大切なお祭りに、小さい島がなんだか浮き足立ってる。夕日も沈んで頭上に星が輝き始めた頃、いよいよ舞台はスポットライトを浴びて始まった。任意参加とはいえ、島人総出の舞台は島のおじさん、おばさんによる余興にはじまり、高校生による島の若者の恋愛話から結婚までのラブストーリー(最後は相手が日本とアメリカに出稼ぎに行くという設定、リアルだ…)の後、いよいよ子どもたちの出番がやってきた。
自分たちの手作りのお面や紙芝居などに、鳥や豚、魚など島の子どもたちにとって身近な生き物が次々に登場。途中音楽の音が出ないなどのハプニングも愛嬌。子どもたちの夢中な演技に、思わず私たちも引き込まれてゆく。物資的な豊かさと引き換えに島を明渡せ!と要求する海賊に揺れ動く島民。しかし、自然の仲間や動物との関わりを通して、「ここは僕たちの島だ!」と島を自分たちの手で守ることの大切さに気づく。拍手喝采の中、幕は閉じた。すべてビサヤ語だったので、内容の全部がわかるわけではない私も思わず胸がジーン…。
終わったあと、しばらく島の人々の心がひとつになったような感覚に包まれた。小さな島だからこそ味わえる、その一体感がとても新鮮だった。その後のパーティで子どもたちへケーキのプレゼントがあった。一切れのケーキを家族にも食べさせてあげたいと、大切にとっておく子。終わったあとも台詞を口ずさむ子などを見ていると、このお祭りを通じて、家族について、仲間について、島のこれからについて子どもたちが身体と心で考えるきっかけになっているような気がした。
カオハガン島では、崎山さんの運営する宿泊施設の収入を島の医療費や教育費に当てたり、パートナーの順子さんが島民にキルト(左参照)を教え新たな収入源にするなど、新しい試みを続けている。最近は出稼ぎに出ていた人が、島に戻ってきたり、島内で結婚したりなどで人口が増え続け、6年前の約1.5倍の約350人が島で暮らしているという。これからは人口問題が課題になりそうだけれど、島民も新しい島のあり方や自立、持続可能な豊かさの形を模索しようとしている。この島で生まれ育ったことを誇りに思える、そんな子どもたちがたくさん育ってほしい。